特殊な認知症、特発性正常圧水頭症とは

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先日、70代後半の男性が、奥様及び息子さんと共に来院されました。ご本人は杖をつきながら小刻みに歩き、転倒しないかと心配でした。3年ほど前から歩き方がぎこちなくなったということです。奥様の話では「自分一人では10分くらいで歩ける所でも、夫と一緒に歩くと40分ほどかかってしまう。」ということでした。また1年ほど前から物忘れがひどくなり、数分前に話したことを覚えていないことがあるようです。最近では、オシッコを漏らすようになりオムツが必要な状態でした。

このような患者さんが受診した場合、脳神経外科医はすぐに「特発性正常圧水頭症」という病気を頭に浮かべます。特発性正常圧水頭症とは、脳や脊髄にある脳脊髄液(略して髄液といいます)の吸収が悪くなる事によって、脳室という部分が拡大し周囲の脳組織を圧迫することにより起こる病気です。脳室とは、脳の中に存在し髄液を作り貯蔵する部屋です。一般に、この脳室に過剰に髄液が貯留している状態を「水頭症」といいます。この場合脳の容積が大きくなり、頭の中の圧力(頭蓋内圧とか脳脊髄液圧といいます)が高くなりますが、この病気の場合は圧力が正常なため「正常圧」という言葉がつきます。また、原因が分かっていないため、「特発性」です。

この病気の症状は、「歩行障害」、「認知症」、「尿失禁」の3つです。その中でも、歩行障害が重要な症状で、今回の患者さんのように歩行障害が先行する事が多く、アルツハイマー型認知症などの他の病気と鑑別する時に参考になります。特発性正常圧水頭症の最大の特徴は、正確な診断・外科的治療(手術)をすれば、症状は改善されるということです。

患者さんとご家族にこの病気について説明すると、奥様は「ウンウン、この病気に違いない」と納得されましたので、まず頭部MRI検査を行ないましたところ、やはりこの病気に特徴的な脳室の拡大が見られたため治療可能な病院に紹介しました。その後、紹介先から報告があり、特発性正常圧水頭症が考えられ、まずタップテスト(腰の骨の間から針を刺し、髄液を抜いて症状が改善するかを判定する検査)を行い、その後手術を検討するとの事でした。まだその後の報告は届いておりませんが、手術が成功し、奥様と一緒に散歩できることを願っております。

特発性正常圧水頭症について|東京逓信病院
https://www.hospital.japanpost.jp/tokyo/health/magazine/101/03.html

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