脳神経外科領域の主な疾患

  1. ホーム >
  2. 脳神経外科領域の主な疾患 >
  3. くも膜下出血とは

    くも膜下出血とは

  1. 頭蓋内の動脈の一部に,壁が薄いところができて,そこが次第にはれてきて動脈瘤(どうみゃくりゅう)というコブができることがあります。これが、脳を保護する膜の一つである『くも膜』と脳との空間にはりめぐらされた血管で、何かの拍子にやぶけて血が吹き出たのがくも膜下出血です。
    動脈は、大動脈から次々に枝分かれして全身に分布し,心臓から送りだされる血液を全身に巡らせています。これが脳では、左右の頚動脈と首の骨に沿うように流れる左右の椎骨動脈という,計4本の動脈が元になっています。これが細かく枝分かれして、脳の隅々まで血流を運ぶわけですが,特に頭蓋骨,脳の中に入った直後のところで動脈が複雑に枝分かれしています。動脈瘤はここにできやすいので,破れて吹き出した血液は脳内出血と異なり脳の表面,すなわち脳とくも膜との空間に流れ出ます。

    くも膜下出血の主な症状

  1. 症状として、「バットで殴られたような」とか、「これまで経験したことがない」などと表現される激しい頭痛というのが典型的です。また頭痛と一緒に、激しく嘔吐したり、意識を失ったりする事が多くあります。しかし、破けるのが動脈なので血液はかなりの勢いで吹き出ますから,吹き出し方がひどいと、吹きつけられた部分の脳が破壊されてしまうことも多く、またあっという間に頭蓋内の圧が上がってしまって、直ちに生命に危険を及ぼすこともあります。もう一つ、くも膜下出血からある程度の時間がたってから、脳の血管のあちこちが細く縮んでしまうことがあり(脳血管攣縮と呼んでいます)、そのために脳梗塞が発生してしまうことがあります。
  2. くも膜下出血の主な原因

  3. くも膜下にはり巡らされた脳血管が破れて出血するのがくも膜下出血です。
    原因としては、脳動脈瘤と呼ばれる動脈のコブからの出血が最も多く、発症した人の80~90%にも及びます。
    脳動脈瘤は他の部位に出来る動脈瘤と違って、症状を伴うことが無いため日常生活に支障を来たさないことがほとんどです。しかし、何かの拍子で脳動脈瘤が破裂することでくも膜下出血を引き起こします。脳動脈瘤以外の原因としては、脳動静脈奇形の破裂や頭を強く打ったことによる外傷性出血があります。外傷性出血によるくも膜下出血は、健康な人にも起こりうるトラブルであるため注意が必要です。
  4. くも膜下出血の予防

  5. くも膜下出血の大部分は脳動脈瘤の破裂によって起こります。この脳動脈は症状を伴うことがないため、できても痛くも痒くもありません。この未破裂脳動脈瘤を発見し処置するのがくも膜下出血を予防する一番の方法です。
    また高血圧,喫煙,過度の飲酒は動脈瘤破裂の可能性を数倍高くするという報告もありますので、くも膜下出血の予防には高血圧予防・禁煙・節酒が重要です。
  6. くも膜下出血の検査

  7. まず、くも膜下出血が疑われた場合は、CTスキャンによる検査が行われます。くも膜下出血を起こすと、必ず脳脊髄液に血液が混ざる為に、特徴的な検査結果がCTスキャンで確認する事ができます。ただ、くも膜下出血のような症状があり、CTで検査をしても脳に出血していることが確認できないことがあります。その際に行う検査が腰椎穿刺です。腰椎穿刺は、腰から注射をし、脳脊髄液に血液の混入があるかどうか、確かめる検査です。

    くも膜下出血と確定した後は、くも膜下出血の原因(脳動脈瘤か脳動静脈奇形なのか)や、動脈瘤の位置、数、大きさなどを調べる必要があります。一番精度の高い検査は、カテーテルを用いた脳血管撮影検査です。
    ただ、カテーテルよりも患者さんへの身体の負担が軽いCT血管造影(=CTA)やMR血管造影(=MRI)などを使って血管造影検査を行うようになってきています。
    くも膜下出血ではMRAよりも画像が鮮明であるCTAの方がよく行われています。